『ミッドサマー』本国ティザー予告(日本語字幕付き)|2020年2月公開
大人気の映画ミッドサマー。セラピー映画や恋愛ドラマとして大人気ですね。
私も拝見してきました。
知らない方はいないと思うのですが、ミッドサマーは不慮の事故で家族を失い、天涯孤独となった主人公、ダニーが北欧のホルガ村で様々な体験をし、村の人たちと交流を重ねて、悲しい出来事から立ち直っていくと言う物語です。
以下ネタバレ内容。
家族の死後、ダニーは家族や両親という言葉に激しい悲しみを感じて、泣きだしてしまいそうになります。しかし、そんな一般的な言葉で号泣してしまっては周りの人たちに迷惑をかけてしまうので、一生懸命押し殺します。
ダニーを支えてくれるのは恋人のクリスチャンです。
しかしダニーは、このままクリスチャンに依存していてはいけないと感じています。彼は優しい言葉をかけてくれるけれど、自分は彼にとって重しになっている。本当なら別れなければいけないと、薄々思っているのです。
けれどダニーには、家族を失って恋人とも別れることはできませんでした。
ある日、恋人のクリスチャンが北欧に旅行に行くことを知ります。
直前まで旅行に行こうか迷っていたけど、行くことにしたんだとクリスチャンは説明し、友人たちから君も一緒に行かないか誘えと言われていると言います。
自分が行って迷惑ではないか。ダニーはそう感じました。
けれど、ずっと家の中に閉じこもっているダニーには少し魅力的にも感じる提案でした。
クリスチャンを村に招待したのは交換留学生のペレでした。彼はダニーの誕生日が村のお祭りの始まる日と同じだと知り、「ダニーにもぜひ来てほしい」と言ってお祭りの華やかな写真を見せます。そして、自分も両親を失ってしまったので君の気持ちが良く分かる。とダニーに寄り添おうとします。
ホルガ村につくと皆大歓迎をしてくれました。
「遠いところからようこそ。よく来てくれたね。」「お茶をどうぞ。ゆっくりくつろいで。」「足りないものがあったら言ってね。」
皆久しぶりに家族が帰ってきたように歓迎してくれます。
ペレもダニーがホルガ村の女性たちと同じようなワンピースを着て、花冠を付けている絵を誕生日にプレゼントしてくれました。
華やかなモニュメントのメイポール
黄色い三角の建物のような教会
大切な習わしの描かれている本
おそろいの白い服を着た村人
不思議な遊びをしている子供たち
あちこちで咲いている花と、のんびりとしている羊や犬、檻に入ったクマ
おとぎ話の世界です。
しかし村の人たちの文化はダニーには衝撃的なところがありました。
そのため、早く帰りたいと思ったり、自分だけホルガ村に置いて恋人たちが帰ってしまう悪夢を見たりしました。
一方クリスチャンは村の文化に興味津々で、それを題材に友達と協力して論文を書くことにしています。
恋人のはずなのに、クリスチャンとの心の距離を感じるダニー。
ペレはそれを感じて、「彼は君の心を支えてくれている?」と二人の心が離れていることを心配してくれます。
村の人たちは押しつけがましくなく、ダニーに寄り添おうとしてくれます。「一緒に料理を作らない? 」「このエプロンつけて。」文化の違いに戸惑っていたダニーですが、村の人たちは親切です。
なにより、彼女を余所者ではなく、家族のように接してくれているのです。
しかし事件が起こります。
クリスチャンの友人、マークが村の大切な木におしっこをしてしまうのです。村の人はかんかんに怒りました。
そして、村の女の子に誘われて、マークは姿を消してしまいました。
その時同時に、クリスチャンの友人の一人、ジョシュも行方不明になります。
彼はホルガ村の文化を学ぶことに熱心で、村の大切な習わしがかかれている本にも興味を示し、資料として写真を撮りたいと言っていました。しかしそんなことは許されません。
その本も行方不明になってしまったのです。
自分たちのグループで問題が起きてしまって申し訳なく思うダニー。
しかし、皆一方的に責めたり、余所者だからと差別しません。
落ち込んだダニーを村の女性がお祭りのダンスに誘います。
このダンスはお祭りの中でも大切な、村の女王メイクイーンを決めるための儀式の一つです。最後まで立っていた女性がメイクイーンになります。
もしかしたら大切な本を盗んだ仲間かもしれないのに、村の人たちはダニーを疑ったりしません。
一緒に大切な儀式に参加させてくれるのです。
ダンスはとても激しく、くるくる回ったりメイポールの周りを駆けたり、立ち止まったり。
ダニーは一生懸命見よう見まねで踊ります。
そのうちに、いつの間にかスェーデン語まで喋れるようになっていました。
気が付けば立っているのはダニー一人でした。
メイクイーンになったダニーを、村の人たちが祝福してくれました。ペレも驚き、とても喜びました。その中にダニーは亡くなったはずのお母さんを見ました。
ダニーは村の人たちとすっかり打ち解けていました。
彼女は女王として、村のお祭りで教会に入る人を選ぶ役割がありました。
教会に入るのは、クリスチャンか抽選で選ばれた村の人です。
この教会にクリスチャンが入ることは、クリスチャンと別れることを意味していました。
ダニーは、今まで自分の心の支えだったクリスチャンと別れる決意をします。
クリスチャンと別れたダニーは、大声で泣き、感情を解放し、そして最後にそっとほほ笑みました。
というのが、セラピー映画や恋愛ドラマとしてのミッドサマーの側面です。
この部分だけをぬきとると、あら不思議、こころ温まる映画になります。
しかし実際は
・来るものはドラッグで大歓迎
・72歳になると強制的に人生を終了させられる老人たちの飛び降り自殺儀式
・去る者は強制的に祭りの生贄
・よそから来た男を吟味して子種確保
・祭りの中盤イベント、教会に贄を入れて焼く(生死問わず)
という殺傷力の強い作品です。
クリスチャンの友人たちは殺されても仕方ない、もしくは禁忌を犯すように誘導されて誘惑に負けるという形で殺されているのですが、ダニーたちとは別に連れてこられた訪問者、コニーとサイモンは村の中での行動だけなら、秘密を知ったから殺されたというようにしか見えないため、とくにサイモンはそこまでされるの?と一番惨い仕打ちを受けています。
とにかく訪問者がひどい目に遭うのです。
ダニーのその後も、彼女がどんな扱いを受けるのか、映画の中では名言されていないのです。
メイクイーンになった女性たちがその後どうなるのか。祭りの最後で殺されるのではないか、という考察もあります。
ダンスの前にダニーは薬物の入った飲み物を摂取しているので、彼女が正気に戻った時に、クリスチャンを殺してしまった罪悪感を抱くのか、これまでの仕打ち(うわべの言葉だけでないがしろにされ、誕生日も付き合った期間もろくに覚えていなくて、村の娘と子作り)を思い出して清々するのかは分かりません。
が、監督曰く、これは一人の女の子の再起の物語なので、彼女はこれからホルガ村で幸せに生きていくのではないかと思います。72歳まで生きたら強制終了儀式があるのですが、ホルガ村の生き方に染まった彼女ならそれも喜びとして受け入れるのではないでしょうか。
やってることはカルト宗教ですが、これは、ダニーの再起の物語なのです。