NOPE。日本人にはなじみのない言葉ですがニュアンス的には「ありえない」という信じたくないものに遭遇した時に発する言葉とのこと。
凡人ならもっと別の解りやすいタイトルをつけたくなりますが、知る人ぞ知るジョーダン・ピール監督はこの作品に「NOPE」と付けました。
ミッドサマーのアリ・アスター監督も観賞中に思わず言ってしまった「NOPE」。
クソださ邦題を付けられることなく、原題のまま「NOPE/ノープ」と付けられ日本にやってきた最悪の奇跡の物語。
ジョーダン・ピール監督の一作目は「ゲットアウト」は、「どこ観ても伏線がある!!」と考察廚にさながらウォーリーを探せに夢中になる子供のように気持ちよい伏線回収を与えてくれました。
「そんな頭使いそうな映画やだ。」
というイメージを持った方もいるかもしれませんが、NOPEは普通に、頭空っぽにしてみても、怖い映画でした。
怖い映画苦手な人が見たら雲のある空の下を歩きたくないレベルで後ひく怖い映画でした。
「NOPEは怖いのが苦手な人でも観れるよ!」
という人もいますけど、観れると怖くないは別の問題だということを教えてくれる作品でした。
NOPEには直接的に人が傷つけられるシーンはほぼないんですけどね、想像力を駆り立てる見せ方が本当にすさまじくうまい。
「え……じゃああの音って人が……。」
と想像したらもう嫌な気持ちでいっぱいになるシーンがもりだくさん。
しかしそれだけで終わらないNOPE。
圧倒的な脅威に立ち向かう兄と妹とディスカウントストアの店員の姿は見ていてハラハラドキドキ。
そして予告でもチラ見せされたあの作品のオマージュ。
ホラー苦手だけど考察大好きな人には文句なく楽しめる映画です。
以下ホラー部分のネタバレ
NOPEの主役といってもいいのが、雲に隠れた得体のしれない存在。仮称「Gジャン」。
最初は古来から使われてきた円盤スタイルの飛行船なのかと思ったのですが、主人公のOJは「あれ……生き物かよ……。」と気づきぞっとするわけです。
え、あれ生き物??としばし驚きますが、納得する行動パターンがあります。
木馬を本物の馬と気づかず食べてしまうのはルアーにひっかかる魚のようです。
手足がないので口ですーんと食べ物を吸い上げるわけです。
Gジャンの食べ物は馬や人間等の生き物です。
服やガーラントや木馬や車椅子なんかは消化できません。吐き出します。
大雑把に食べ過ぎて気持ち悪くなった時は吐き戻します。
進撃の巨人の巨人は消化できないので人間も吐き戻しますが、Gジャンはひっかかった無機物とそれにまざった体液を履き戻すくらいです。
このシーンが本当に最悪すぎてもう見ているほうも戻しそうです。
そしてこの作品の主人公たちとはほぼほぼ関わりないのですが、意味深に挟まれるチンパンジー。
日本でもおなじみの動物タレントですが、その筋肉は人間の顔も簡単にもぎ取ります。チンパンジーにかかれば人間の肉体はちぎり蒸しパンのごとくもぎ取られます。
撮影中に風船の破裂する音に驚いてパニックになったチンパンジーが襲い掛かり、血まみれになったシーンはどれほどおぞましい状況なのかと、自分の想像力こそが恐怖だと教えてくれます。
そこに意味深に直立したサンダル。
もうこの先何が起きても不思議じゃないと思わせてくれる導入です。
二度と観たくないと思いつつ、ツイッターで考察を見るとまた観たくなるNOPE。
ちなみにIMAX版をお勧めする人が多いのですが、個人的にはクライマックスのあれとかIMAXで観るのに勇気がでませんでした。