全てのファンタジーの基礎となったと言われるJRRトールキン作の長編小説「指輪物語」。
2001年、ピーター・ジャクソン監督は映像化不可能といわれた指輪物語を映画化しました。
全世界にファンがいる指輪物語。下手を打てばとんでもない大惨事になりかねますが、原作を知らない多くの人を中つ国に旅立たせるほど大ヒットしました。
ホビットどれがどれか分かんねぇよと言われたり、とにかく歩くシーンが多い、と言われたりしましたが、多くの人が絶賛しました。
「ロード・オブ・ザ・リング」と邦画も下手にいじらずにそのままのタイトルで公開したこともあり、日本でも多くの洋画ファンが沼に飲まれて行きました。
私が初めてロード・オブ・ザ・リングを劇場で観た時、前知識を何も仕入れずに挑んだため大変な衝撃を受けて帰りました。
3部作って知らなかったから中途半端に終わってびっくりしたのです。
しかしその素晴らしさに続きが気になり原作を読みました。
私の人生が色々狂い始めた時でした。
話は戻り、ロード・オブ・ザ・リングはいろいろ衝撃的な映画でした。
原作は挫折する人が多いほどカタカナ名が多いのですが、ピーター監督はなるべく必要な情報を絞り、でもキャラクターを殺さず、むしろ受け入れやすいように少し改変を加えました。
魔法使いのガンダルフ。エルフのレゴラス。ドワーフのギムリ。騎士のボロミア。謎多き旅人アラゴルン。指輪の担い手のフロド。そして彼のためについてきた三人の勇敢なホビット。
目的は敵陣の真っただ中にある火山へ指輪を捨てに行くこと。
ホビットは基本的に畑を耕し、畜産を行い、一つの場所に定住します。食べることが何より好きで、朝ごはん、朝のおやつ、昼ご飯、昼のおやつ、夕ご飯、夜食と六食食べます。ホビットは基本的に旅に出ません。旅に出るホビットは変わり者として変人扱いを受けます。
ホビットのフロドがどうして過酷な旅に出かけることになったのか。
フロドの親類、ビルボが旅先から持ち帰った指輪が、世界を支配しようとするサウロンの指輪を偶然にも拾ってしまったからです。
本来なら指輪の力に飲まれてしまうところ、あまりに善良すぎたため指輪は長いことどこにあるかわからない状態でした。
ビルボは長い間隠してきましたが、蝕まれていたことには変わらず、彼は村を出てエルフに保護されることになります。
しかしついにサウロンにも気づかれ、フロドはガンダルフの導きにより指輪を葬る旅に出ることになるのです。
当時ハリー・ポッターと賢者の石が公開されてなにかと比較対象にされましたが、メガホンをとったのがピーター・ジャクソン監督でなければとんでもない敗退を迎えていたであろう本作。
それがIMAXになったとあれば、あの日の私なら劇場が限定すぎて観に行けないことに涙で枕を濡らしたでしょう。
でも今の私はネットで席を予約してわくわくしながら劇場にスキップで向かうだけです。
つきましたのは池袋にあるシネマサンシャインの最上階。景色がすでにサウロンに支配されつつある中つ国のような不穏な空模様ですが気にしてはいられません。
A3サイズの入場特典ポスターをもらって座席に付きます。
IMAXの音響がとても素晴らしいんですよという説明を受けてからこれまでのあらすじが流れ、ホビット村ののどかな光景と共に本編が始まります。
主人公のフロドはイライジャ・ウッドが演じています。
原作では齢50を超える中年ホビットですが、イライジャ・ウッドが演じると可愛いさと純粋さの中に、知性を感じる魅力的な主人公になります。
カメラワークとスタントをうまく活用して、俳優たちの背丈はそんなに変わらないのに「ホビットはですねぇ!小っちゃくて可愛いんですよぉ!!」としっかり説明してくれます。
記憶の何倍もフロドが小さくて可愛い。
サムも記憶の何倍も純朴で可愛い。
メリーは記憶よりもちょっとイケメン。
ピピンは記憶よりも愛嬌があってバ可愛い。
ガンダルフが記憶よりもホビットのこと好きな気持ちが隠しきれてない!
イアン・ホルムのビルボが思ったよりもマーティン・フリーマンのビルボそっくりだ……マーティンすげぇ!!
と二十年以上前の自分と答え合わせしながら眺めます。
追手からなんとか逃げ延びて警戒心に満ちたフロドたちは、ガンダルフに会うために酒場に行くのですが、そこで店の端にいる怪しげな男の視線に気づきます。
もうこの登場のし方だけで好きになります。
ガンダルフの代わりに待っていたのはガンダルフの友人、アラゴルン。この時彼は名前を明かさず、ストライダーという呼称だけがフロドたちに与えられた情報です。見てくれが怖いしうさんくさいしオーラも怖いし敵か味方かわからない。
演じるのはヴィゴ・モーテンセン。実は別に決まっていた俳優から急遽抜擢されたという逸話のある俳優ですが、「嘘でしょ……こんなに怪しさとうさん臭さと泥臭さの中に、慈愛と善良さをのぞかせる人が代役? 」と感じたものです。
ストライダーは追手に追われているのに二回目の朝食を食べようとするホビットに「ちょっと言ってる意味がわからない……。」と引きながらも、リンゴをくれたりします。優しい。
そしてなんやかんやあってエルフのお屋敷で人間、エルフ、ドワーフが集まって会議をするのですが、もうてんやわんや。戦争につかおうぜ! ふざけんなこんなもん廃棄一択だろ! エルフが仕切るな! と話がまとまりません。死にかけてやっと家に帰れると思っていたフロドは、僕が捨てに行きますと挙手をするわけです。
この時のフロドが本当に小さくて可哀そう。
サウロンの指輪はとても危険なものなのですが、ビルボやフロドがひょいっと持っているのでどの程度危ないものなのか……と思っているとガンダルフは一切指輪に触れていないことに気づきます。
ビルボが手放すことができず、床に落として言った指輪を触りもせず、気づいたフロドがひょいっと拾っても自分からは確認しようとしません。
指輪はそこにあるだけでどんどん周りの人をむしばんでいきます。
ガンダルフをモリアの坑道で失い、フロドの心はすり減ってぼろぼろですが、それでも旅は続きます。
指輪を手に入れればサウロンに匹敵するのではと言われているガラドリエル夫人が出てきます。
見た目は美しいし上品なのに、そこに漂うのは明らかに「得体のしれない」強者感。彼女に見つめられたボロミアは滝汗ですし、エルフ嫌いなギムリはその美しさに茫然としています。
フロドはワンチャン、ガラドリエル夫人がもらってくれないかなと指輪を差し出しますが、ガラドリエル夫人がめちゃくちゃ怖くなった後に「試練に打ち勝ちました……。」とすっきりした顔をしました。
彼女にとっては大事なことですが、勝手に試練にされてしまった上結局指輪をもらってくれなかった小さくて可哀そうなフロドはげっそりしながら旅を続けます。
IMAXでもカットされていましたが、ギムリがガラドリエル夫人に御髪を一本いただけないかお願いしたら三本もらえたとウキウキしているシーンがあります。この失うものが多い旅で小さな幸せを見つけたギムリの貴重なシーンはDVDでぜひとも観てほしいです。
そして訪れる旅の仲間の最大の試練。
フロドは大きな決断をせまられます。
二十年経っても色あせない感動の一部ラスト。フロドは絶望の旅に向かい、アラゴルンたちは攫われたメリーとピピンを救うためにマラソンを始めます。
さて、この先はサブスクでもレンタルビデオでも観ることができますが、10月にIMAXで公開されます。
余裕と機会のある人は、あの素晴らしい光景を大きなIMAXで観ていただきたいです。
意外な彼がフロドたちの仲間に加わったり、新たな推しが見つかったりします。
唯一気を付けるのは己の膀胱の限界だけ。
私、劇場で通路側に座っていたんですが、今まで見たい映画の中で一番多くの人がトイレに席を立つのを見ました。
皆さん席選びにも気を付けてくださいね。