三十路からのデスマーチ

何気ない日常がもしかしたら誰かの役に立つかもしれない。

人は強いということを教えてくれた「シン・ウルトラマン」

ウルトラマン。今までちゃんと見たことないけどシン・ウルトラマンは観てみたい。そんな風に思わせてくれるだけでもう成功しているのではないかと思います。

公開初日こそ「シン・ゴジラみたいなのを期待して行ったらがっかりした」という声もありましたが「ゾーフィって誰? 」と興味を持った人や「シン・ウルトラマン……私の好きな言葉です……。」と山本メフィラス構文をさっそく使う人もいました。

そして、庵野監督ファンの方たちからは「エヴァは、ウルトラマンだった……?」と綾波レイと、ウルトラマンと融合した神永新二の類似点に震撼したりしました。

私もウルトラマンはふわっとした知識しかなく、昨今の新しいウルトラマンは全く知りませんでしたが、シン・ウルトラマンは一本の映画としてきれいにおさまり、とても楽しく観ることができました。

中でも、公開前は「アイドルに忖度したのかよwww」と言われていた有岡大貴さん演じる滝明久というキャラクターは多くの人に「こんな俳優さんがいたなんて……。」と驚き記憶に残るほど、素朴で魅力的な、キャラクターでした。

 

シン・ウルトラマンの世界では、すでに多くの怪獣が訪れ、日本は自力で撃退していました。

怪獣撃退のための組織、禍特対で青年滝くんは日本のために働いていました。

ある日やってきた銀色の巨人が怪獣をささっと片付けてくれて、さらにやってきた外星人、観客の心をわしづかみにするほど紳士的なふるまいをするメフィラス星人に科学力の力を見せつけられて、「もう人間にできることなんかないじゃないか。」とストゼロを飲んでしまいます。

けれど心の底では、滝くんは「ちくしょう!」という気持ちを抱えていました。

「どうすりゃいいんだよ!」「でも負けたくない!」「どうしたら勝てるんだ!」そんな気持ちを彼の背中はにじませます。

斎藤工演じるウルトラマンは、小さな人間が一生懸命生きている姿を見て、彼らを知りたいと思いました。本を読み、会話をし、彼らを知ろうとしました。

滝くんのことももちろん見ていました。

だからそっと微笑んで、光の星のものすごい科学技術のつまったUSBを託すのです。

珈琲ももってこれなかったのに!!

ストゼロを飲んでいた滝くんは同僚の生物学者、船縁さんからそのことを知らされ、ストゼロ飲んでる場合じゃねぇとパソコンに向かうわけです。

あんなに心折れていた滝くんが!!

シン・ウルトラマンは、ウルトラマンがとにかく強いのですが、最後の最後は希望を捨てなかった人間と一緒に脅威に立ち向かっていきます。

命を投げ出し、人間を守ろうとしたウルトラマン。彼の人を知りたいという気持ちが「そんなに人間が好き」なのだと教えてもらうシーンは「ウルトラマン、ありがとう……。」と涙が思わずあふれてきます。

そして流れる「M八七」のなんと美しいこと。

「光の国からぼくらのために、きたぞわれらのウルトラマン」という日本人なら聞いたことのある歌が、解釈バトルでは負けなしの米津玄師のフィルターを通せば、「君が望むならそれは強く応えてくれるのだ」になるのです。

どんな人生を送ってきたらこんな歌詞とメロディ―が出てくるの??

 

シン・ウルトラマンは不思議なことに、観終わった瞬間はいろいろ思うこともあるのですが、なぜか後に徐々にじわじわと心にしみてきて「もう一回」と思えるような作品になってきます。

私ももっと知りたいと思い、予告の頃は一回も訪れなかった公式ホームページに行き、制作陣の名前を見てみました。

企画・脚本はオタクなら知らぬものはいないと言われるほどの人、庵野監督。そして監督は樋口真……え? あの原作ファンからぼっろくそに叩かれた実写版進撃の巨人の人!?しかもその時の批評に対するコメントで炎上してたの?

あれだけ叩かれた作品に監督として携わっていて、また巨人ものの実写版映画で監督を務めるなんて……すごいなぁ。

 

まぁ進撃の巨人は原作ファンがブチ切れたのがストーリーの部分で、後年原作者の諫早先生がものすごいアプローチをかましてお願いして脚本を書いてもらったことが発覚し、誰が被害者なのかわからなくなりファンも困惑したという歴史がありますので……。