三十路からのデスマーチ

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人間じゃないからヨシ!バイオレンス映画「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」 

中国のアニメがすごいと、昨年から話題のアニメ業界。

中国ではアニメは子供向けという位置づけのため、性的、暴力的な作品はきびしく規制されているといいます。

そんな中国から本来であれば「ありえない」ほどの暴力描写を背負ってやってきたのが「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」です。


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子供のトラウマどころか、繊細な大人もトラウマになるレベル。

鬼滅の刃を残酷だと言っていた保護者が泡吹くレベル。

体液が赤くないし人間じゃないからOK!で済ませたらダメなレベル。

つまり、大変魅力的なバイオレンス映画になっています。

 

ストーリーは、中国の山奥に家出した皇太子を探して、真っ赤な羽織を頭からすっぽり覆ったダフファさんがやってきます。

彼は外見は子供のようなのですが、戦闘能力、判断力、貫録、とすべて完ストしています。日本では赤ずきんちゃんと呼んでしまいそうになりますが、皇太子は彼のことを字幕では「ダルマ」と呼んでいます。

たしかに、真っ赤で手足を隠してころころとしている姿はダルマにも見えます。後々のストーリーでも、彼が決して倒れない。倒されても瞬時に起き上がる強さの持ち主であることが表現され、日本的な達磨のイメージにも合致します。

ダフファさん。実は国が認める王族の護衛のような存在で、おそらく100年以上は王家に仕えているようです。

皇太子に対する態度も慇懃無礼です。

ため息交じりに皇太子を探して山に入り、人っ子一人いない辺鄙な山奥、のはずが、整備された道に辿りついたダフファさん。皇太子の持っていた装飾品を持った謎の人物に出会います。

日本で言うこけしのような頭をし、言葉を一切話さず、絵でかいたような顔をした、没個性的な人たちの集落。

彼らは傷付けられると、緑色の体液を血のようにまき散らして、人間のように絶命します。

しかし人間ではないようです。

彼らの体には謎の湿疹(のちにキノコと判明)が生える奇病があり、その湿疹が生えた者を容赦なく処刑しています。

果たしてダフファさんはこの謎の集落から皇太子と共に帰ることができるのか!

 

以下ネタバレを含めた感想。

よく、予告詐欺やポスターと違った、邦題がクッソダサイという映画がありますが、「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」は本当に予告に偽りなく守護者と謎の豆人間でした。

主人公ダフファさんはドラゴンボールの初期主人公のように、見た目は子供ですがえげつない戦闘能力の持ち主。最初彼の攻撃で豆人間が粉砕され、身体をバラバラにされていたので「豆人間は人間よりも身体がもろいのかな」と思っていたのですが、そんなことなく人間の身体に向かって撃ってはいけないものでした。

中国版のポスターでは、彼が杖を猟銃のように巧みに操り豆人間を打ち砕くかっこいいデザインのものがあります。

戦闘漫画などでよく見る、謎の光る玉を飛ばして相手を粉砕するダフファさんですが、弱点があります。

愛用の鉄製の杖でないと、無限に使えないのです。

他の鉄製の棒では、数回撃つと棒の方が破壊されます。

一見無敵のようなダフファさんは、杖がないとほぼ小さい人間のように非力になり、豆人間の銃に対抗できません。パワーバランスがうまくとれています。

 

この作品のもう一人の主人公とも言えなくないのが、ダフファさんが探している皇太子。

彼は女官を描きたい(おそらく裸婦画を描きたい)のに禁止され、じゃあなんかいい感じの山を描くと、山奥に家出します。

皇太子は人が傷つくのを見るのも苦手で、暴力的なこともできません。

自分には皇帝は無理だと言います。

いっけん無責任な髭のツンデレヒロイン枠に見えますが、彼は「人間ではない」と虐げられる豆人間の一人、ジャンを助けます。恩返しに食料を持ってきた彼に、他の豆人間と見間違えるから、とリボンを結んであげたり、装飾をプレゼントしたりと、友情をはぐくんでいきます。

実はこの豆人間、人間によって作られた存在でした。

成長すると頭の中に結晶ができ、それを使って人を操ることができるようになるとかそういったアイテムを作るために「人間のふり」をして生活させられているようなのです。

豆人間は自分たちがどうして作られたのか知りません。

何のために存在しているのか知りません。

しかし、中には自分の存在を考え、探そうとする者が現れます。

ジャンもその一人でした。

豆人間たちはそれを取り出すために、容赦なく撃ち殺され、身体を破壊され、死体が山のように積みあがっていきます。

「DAHUFA 守護者と謎の豆人間」は、要所要所に政治的なメッセージを感じます。

しかしそれが押しつけがましくなく、中華風ウェスタン活劇として成立しています。

おそらく、画風と豆人間のおかげでしょう。

豆人間のおかげで、バイオレンスかつホラー描写もグロ描写もスルーして日本にやってきたのです。

しかし「うーん。」とほとんどの劇場は熟考の結果、うちじゃ上映できないという結論をだしたためか、ごくわずかな劇場でしか見ることができません。

なぜ。

刺さる人多そうなのに。

いやでも羅小黒戦記みたいなヒットは期待できないし。

と私も感じました。

もしも予告を見て気になる方がいらっしゃれば、ぜひとも観ていただきたいです。

日本でも最近見ないくらいのバイオレンス描写のオンパレードに持ってきたポップコーンを口に運ぶことを忘れてしまいます。