三十路からのデスマーチ

何気ない日常がもしかしたら誰かの役に立つかもしれない。

ワンコインのカニ

今週のお題「おうち時間2021」

 

去年のおうち時間何をしていたか、さかのぼって見ると牛の胃袋を煮込んでいました。

いまだに私の大好きなスーパーでは豚バラと同じくらいの存在感でハチノスはいます。

 

そんな私、今年は挑戦した料理があります。

 

カニです。

 

私、カニはどちらかというと好きだけど、カニには悲しい思いでもある方です。

 

かなり前、旅行でとあるホテルに行ったとき、カニが食べ放題ということでウキウキしながらカニの置かれた給食の大きな入れ物のようなところに行ってきたんですよ。

ズワイガニのような細長いカニの足がいっぱいありました。

うきうきしながら足を折ると、糸のように細く儚い身が出てきました。

 

嘘でしょって言いました。若かったから。

 

殻に身がこびりついておりまして、私はどうしようもない気持ちでその身をこそいで食べました。

なんというか、食べてはいけない何かを食べているような、奇妙な食感と微妙な気持ちのこみあげる、無味無臭の食べ物でした。

 

月日は流れ、私は別のホテルに宿泊した際、ズワイガニ食べ放題という言葉に心躍らせてビュッフェコーナーに行きました。

タラバガニの足がずらりと並んでいました。

私は前回の反省を生かし、取り合えず片足分お皿に乗せて席に着きました。

やはり細く儚い身が出てまいりまして、かぶりつきました。

 

しょっぱ。

 

いや鍋に何キロ塩入れてんの??

 

そんな言葉を今度は多少年を取っていたので飲み込みました。

 

カニの香りがし、旨味と甘みが完全に塩味で掻き消されたカニでございました。

 

私はこの時、ケジャンしか勝たん、と思いました。

 

気まぐれクックの金子さんがこよなく愛する生のカニを使った料理。出汁醤油で味付けすればカンジャンケジャン、辛い唐辛子ベースのタレに絡めればヤンニョムケジャン。

鮮魚が日本の専売特許だと思うなよとばかりに、韓国から上陸してきた最高においしいカニ料理は、これまで私を裏切ったことがありませんでした。

 

しかしなぜでしょう。大人になってから食べる茹でたカニはかっすかすの無味無臭か、すべてを覆い隠す塩味。

 

私はもうカニを求めることはありませんでした。

 

しかし、気まぐれクックの金子さんがカニのさばき方を披露し、茹でて食べる姿を見て、もしかしたらカニというのは美味しいのではないかと思うようになりました。

 

そしてやっとその日は来ました。

 

スーパーで小ぶりなズワイガニが500円で売られていました。

明らかに危ない外見と値段。しかし500円なら最悪カニの殻から出汁をとって雑炊にすればいいし、と思い、お買い上げしました。

 

その時私はカニの足を折るのがめんどくさくて、フライパンでカニを茹でました。

 

塩の分量はググって確認しました。

 

そしてゆで時間が経過し、私はカニの足を一本もぎました。

 

出てきた身は外見そのままの細身。しかしきれいにするりと出てきました。

 

いざ、実食。とかぶりつけば、カニの甘味、旨味、カニの香りが口いっぱい広がりました。

驚いてもう一本、さらに一本と気づけばカニの足半分食べていました。

 

こんなに安いカニでもこんなにおいしいのかと、衝撃でした。

 

私がビュッフェで食べたのは何だったのだろう。カニの形をした別の加工品だったのだろうか。

そう疑ってしまうほどの雲泥の差。

 

おそらくこれは私の推測ですが。

私は生のまますぐにゆで上げました。

しかしビュッフェ等で扱っていたカニは、ボイルしたカニを冷凍したものだったのではないのでしょうか。

 

カニの身は魚以上に儚く痛みやすく、解けてしまうと聞きます。

 

安定した量とコストの面を考えて、水揚げしたものをすぐに茹でてしまって商品化した方が流通しやすいのは当然です。

 

カニを貪り食いつくし、私はそっと手を揃えました。