幸いなことに、私の住む家は近年大雨や台風地震に脅かされない日常を送っています。
しかし、その昔。
台風での出来事でした。
私は当時小学生。兄と祖母と供に、共働きでいない両親の帰りを家で待っていました。
ひどい風が窓を打ち付け、庭の木は斜めになり、子供心にどこか楽しく思っていたような気がしないこともありません。
しかし、大人のいないときに狼はやってくるのです。
非力な老人と子供のいる家も容赦なく襲った台風は、二階のクーラーの下にあった、木製部分の小さな窓を吹き飛ばしました。
今思えば、何故それを気付いたか不思議です。
私たちは一階にいましたから。
兄とともに見に行くと、寝室には雨風が吹き込み、四角い木の板が飛んでいました。
兄と一緒に抑え、ガムテープで補強し、なんとかしのいで一階に行きました。
母は仕事を切り上げて帰ってくることになりましたが、出張中の父はまだ遠く、電車が動かず身動きが取れないもよう。
兄は祖母に駆り出され、雨戸を閉めにいきました。
私は窓の外を眺めていました。
我が家は、コの字型をしていて、凹んだ部分に母の車を停めていました。そこにはささやかな屋根が付いていました。
r字型とでもいいましょうか。片足の屋根と家の形で風をしのいでいました。
私は風がひどいなあと見ていると、突風が一層窓を打ち付けました。
丸めた新聞が飛んで来たら、確実にガラスをぶち破るレベルの突風。
幸いなことになにも飛んでこなかったのですが、家の形が災いしたのでしょう。
車の雨避けが目の前で、まるで何か大きな見えない手に握りつぶされるように屋根を巻き込み潰れていくのを、私はなすすべもなく見守っていました。
あれは、外に出れば、子供など吹き飛ばしてしまうほどの風でした。
鉄製の柱をへし折りながら、屋根をぐちゃぐちゃに丸めました。
台風の後、無くなった看板やたこ焼き屋の巨大なタコの飾りを見て、その規模を知ることがあります。
私は目と鼻の先で、風の本気を垣間見ました。
あの光景は、映画かと思うほどあっけなく、一瞬で、凄まじい力を子供の目に焼き付けました。
台風の日に外に出ない、は当たり前ですが、今一度家の外回りを確認してみてはいかがでしょうか。
家の中にいても襲ってくるのが、災害です。