三十路からのデスマーチ

何気ない日常がもしかしたら誰かの役に立つかもしれない。

手を出した相手がヤバかった系「シス 不死身の男」

盲目の退役軍人の家に強盗に入った、引退したテロ暗殺部隊がボディーガードをしていた娘を誘拐した、凄腕の殺し屋だった男の愛犬を殺した等々、映画には

「手を出したらあかん奴に手を出したため報復に遭う」というジャンルがあります。

フィンランドで制作された映画「シス 不死身の男」もその一つ。

 


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本作は愛馬と愛犬を連れて孤独に金を彫るアアタミ・コルピという老兵の物語です。彼は寡黙で映画の結末まで言葉を発しません。

戦争で家族を失った彼は、ややぶかぶかの薬指をつけています。かつては彼の指にぴったりだったのでしょう。やがて金塊を見つけ、換金するために町へ向かいます。

久しぶりのお出かけに嬉しそうな愛犬と共に行くと、不穏な一段とすれ違います。

そう、ナチスです。

時は1944年。ナチスの中でも上のほうにいる兵士はドイツは負けることを察して、どうやって処刑を免れ逃げ延びるか考えているときです。

略奪した財産と食料、そして拉致した女性を交渉材料にああでもないこうでもないと頭を悩ませていると、目の前にやってきたみすぼらしい老人はなんと金塊を袋いっぱいにもっているんです。

そりゃもうヤるっきゃないとウェーイと調子に乗るわけです。

しかしコルピさんは一般フィンランド人ではなく、家族を殺された復讐鬼と化し、上官の命令も無視して一人暗殺部隊と呼ばれ、不死身という二つ名までつけられ、フィンランドでは形容しがたい不屈の精神SISUの代名詞にされ、軍も制御不能に陥ったため、自由におなりと野に放たれたフィンランド兵。

返り討ちにされるわけです。

七人殺されたところで状況を上に報告したところ、七人で済んだなら運がいい方だよ。ロシア兵300人殺した凄腕だよ。ほっといて早く帰っておいでと言われるわけです。

ここで金塊をあきらめて帰っていれば、もしかしたら、もう少し寿命が延びたかもしれないのに、金塊に目がくらんだナチス一団はコルピさんを追いかけるわけです。

ナチス軍団VS不死身の二つ名を持つ一人暗殺部隊の戦いがフィンランドで繰り広げられるわけです。

本作、ストーリーはとても分かりやすいのですが、見どころが満載で2時間弱しかないにも関わらず満ちたりた気持ちで「戦争は良くないなぁ!」とさわやかに劇場を後にできます。

ほとんど武器もなくナチス相手に自分の耐久力で挑まなければならないコルピさんですが、そんな彼の相手をするナチスもまぁまぁ気の毒なのです。

コルピさんが地雷原にいるため、ナチスは自分たちが埋めた地雷を避けて金塊を取りに行かねばならず、そうなると使われるのが下っ端です。

行って来いと上官に言われて、そろそろっと進めば、コルピさんが投げた地雷が上から飛んできます。

ナチスも頭を使って、捕まえてきた女性たちに地雷原を歩かせますが、身も心もぼろぼろになった彼女たちの足取りはあまりに重く、コルピさんはその間にさっさと逃げてしまいます。

やっと追いついたナチス兵が犬を放てば、コルピさんはガソリンをかぶり匂いを消し、見つかれば自らに火をつけて火だるまになり犬がひるんだすきに川に逃げおおせます。

不死身も息くらいするだろうと、少し浮かんだ瞬間に狙撃し、若い兵に回収に行かせますが、むろんコルピさんが死んでいるはずもなく、水中で喉を割かれて人間酸素ボンベにされるわけです。

真っ赤に染まった水面を見つめる若い兵隊の涙目。爽快です。

コルピさん自身は無敵ではありません。ケガをし、息が上がります。

爆弾で吹き飛ばされて意識も失います。

金塊を奪われ、心折れ欠けますが、目の前に操縦士付きの飛行機があれば追いかけて奪い返しに行きます。

何故そこまで金塊にこだわるのか。語られることはありません。

私たちに解るのは、コルピさんは家族を失い、寡黙で、折れない心を持っていること。そして愛犬をとても大切にしていることです。

戦争から離れて静かに菩提を弔いたかったのでしょう。しかしコルピさんは暴力に愛されているかの如く、災難に巻き込まれてしまったのです。

さて、ホラー映画の怪物のように恐ろしいコルピさんを相手に、なんとか金塊を奪ったナチスでしたが、不思議なことに行く先は墜落した飛行機でふさがれています。操縦士の首には自分たちがコルピさんに巻いたはずの縄があるのです。

そして拉致した女性たちがくすくすと笑うのです。

お前たちはもう死ぬと。すべてを奪われた彼は止まらないと。

不死身の一人暗殺部隊に手を出したナチスの末路は、ぜひとも劇場で確かめてほしいです。

 

本作、公式が「犬は無事です」と犬無事予告も作るほど、犬の無事を伝えてきます。馬は爆死させたのに!!

しかしそれも納得、愛犬ウッコ君はコルピさんの愛犬でもあり、中の人こと主演のヨルマさんの愛犬なのです。いくらフィクションと言えども愛犬を殺していいはずがないのです。

本作でもナチスに見つかり撫でられてしっぽを振ってしまうという人懐っこさを発揮し、撮影中もナチス兵の皆さんにしっぽを振って近づいてしまいリテイクを出してしまったこともあるほど。きっと撮影中もいっぱい撫でてもらっていたんだろうなとほんわかします。

犬が無事な爽快バイオレンス映画を観たいなと思った人におすすめの本作です。


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