初めてシャドウ・イン・クラウドの予告を見た時に「おお!またつよつよ女子が怪物をぶん殴る系のアクションか!!?」と期待したものです。
ツイッターでは早速見た人たちから
「シナリオがいまいち。」
「クロエ観たい人だけみたらええ。」
「シナリオがいまいち……。」
となかなかの辛口が並んでいます。文句を言っていいのは観た人だけです。
だから私も言います。
ストーリー
第二次世界大戦下、何故の箱を抱えた主人公、ギャレット大尉は極秘任務を受け爆撃機に乗り込む。それは想像を絶する恐怖の始まりだった。
本作、当時世界中の飛行機乗りを震撼させた架空の怪物「グレムリン」と主人公の戦いのように予告はされています。
しかしグレムリンよりも恐ろしいものとギャレット大尉は戦わなくてはならなかったのです。
主人公モード・ギャレットは戦中の空を200回以上飛び続けた飛行機の整備もできる凄腕パイロットなのですが、彼女が乗り込んだ爆撃機は男だらけのセクハラモラハラざんまいの最悪の爆撃機でした。
突然やってきた美女を彼らはある意味で歓迎しますが狭い爆撃機の底にある銃座に押し込め、彼女に対する卑猥な暴言を吐きまくり。整備不良なのか本当にグレムリンが壊したのか、銃座から出られなくなったギャレット大尉を「どうせ女が何もしてないとか言って勝手にいじって壊したんだろう」と、彼女の報告を無視し、敵機の存在を認めようともしません。
壊れかけた銃座でグレムリンを目撃したギャレット大尉は、クソみたいな男たちに追い詰められつつ、爆撃機をちょこちょこ壊していくグレムリンと、さらには襲ってくる敵の戦闘機とも戦わなくてはいけなくなるのです。
以下若干のネタバレ
ギャレット大尉はどんな極秘任務をえているのか。彼女が「絶対開けるな」と言って渡した箱には何が入っていたのか。
それがわかるのが本作の転換期です。
それまではずっと、観客はギャレット大尉と一緒に爆撃機の乗組員からの差別を受け続けなくてはいけません。
彼らの姿は一切見えず(低予算なんだろうなぁ)声だけが通信機からずっと聞こえてきます。
彼女を攻め立て侮蔑する声は聴いているだけで奥歯の歯茎が痛み続けるような嫌な気持ちになります。
ギャレット大尉が軍に入った理由は、夫のDVから逃れるためでした。
しかしそこでも、同じ国を守るはずの軍人から女であるだけで報告もまともにとりあってもらえないのです。
私はこの映画を観る前に、ガンパウダー・ミルクシェイクという「こまけぇことはいいんだよ!男なんざ銃で撃ったら死ぬんだからよ!!」という武装した女性たちが男たちを物言わぬ肉片に変える映画を観ていたので、しおしおの顔で座席に座っていました。
あれ、予告でグレムリンをクロエがぶん殴ってたはずなんだけどな……という不安な気持ち。
このひたすらギャレット大尉を侮蔑する男たちという展開の尺が思ったより長くて「無理」という人はいたのではないかと思います。
確かにつらかった。
確かに長かった。
きしょくわるいクリーチャーは襲ってくるし、零戦から箱を守らなくてはいけません。
そう、こんな南にいるはずのないやばい戦闘機、零戦がくるのです。
この戦闘機、めちゃくちゃ怖い。どんどん乗組員を殺していくのです。ギャレット大尉も間一髪、箱を取り戻し爆撃機の中に戻ってくるのです。そこにはグレムリンがいるのですがそんなことより零戦です。とっとと追っ払って零戦を撃墜させなければ箱の中身も自分たちの命も木っ端みじんです。
まったくどこの国がこんなおっかない戦闘機を作ったのか。
この一夜の戦いは、ギャレット大尉に何をもたらすのか。彼女は極秘任務を達成することができるのか。
本作は緩急のつけ方がちょっと失敗したかなというところと、あ、予算あんまりないんだな、というのを感じさせてくれる作品です。また、ちょっとそれは無理があるのでは……と感じてしまう設定があります。
でも見たい画はきちんと見せてくれます。
さらに音楽が90年代のB級映画をレンタルした時によく聞いた音楽を模倣しているため、30代以上は「あ、なんか懐かしい……。」という気持ちにさせてくれます。
この作品は、人を選ぶ作品ではあります。
個人的には、予告で見たグレムリンを素手で殴るシーンと、零戦がおっかないところで映画代の元はとれたと思いました。
予告の映像が観たいと感じた人の期待は決して裏切りません。
ぜひ公開している最寄りの劇場へ行ってみてください。